DECODE project 研究テーマ

1細胞イメージングと1細胞全遺伝子発現解析の融合
+ 機械学習による遺伝子発現予測

概要

近年、次世代シークエンサーによるRNAシークエンシング技術が発展し、1細胞内の全遺伝子発現を網羅的に解析できるようになりました。しかし、細胞内の全遺伝子発現を調べるには、その細胞を破壊しないといけません。もし顕微鏡で細胞を観察しただけで、その細胞内の全遺伝子発現が予測できるようになれば、生きたままの状態で細胞の詳細な内部状態をとらえることができます。我々は機械学習を用い、大量の1細胞顕微鏡画像と1細胞全遺伝子発現データを結び付けることにより、細胞を観ただけでその細胞内の全遺伝子発現を予測することを目指します。  

イメージング、シークエンス、機械学習

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技術

  • 1細胞デジタルRNAシークエンシング
  • 機械学習による画像解析
  • 細胞イメージング&ピックアップシステム

特許

  • 出願 : 細胞ピックアップシステムに関する技術開発
     小川泰策、城口克之、ヨダカ技研株式会社
  • 出願 : DNA分子バーコードに関する技術開発
     城口克之

参考論文

  • "The efficacy and further functional advantages of random-base molecular barcodes for absolute and digital quantification of nucleic acid molecules."
    Ogawa, T., Kryukov, K., Imanishi, T., Shiroguchi, K.
    Scientific Reports 7, 13576 (2017). doi:10.1038/s41598-017-13529-3

  • "Digital RNA sequencing minimizes sequence-dependent bias and amplification noise with optimized single-molecule barcodes."
    Shiroguchi, K., Jia, T. Z., Sims, P. A., Xie, X. S.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 1347-1352 (2012). doi:10.1073/pnas.1118018109

  • "RNAシークエンシング"
     城口克之
     生物物理 53巻 6号 p290-294 (2013) doi:10.2142/biophys.53.290

ラマン分光、機械学習とモデルの構築

概要

ラマン分光法とは、光を分子に当てた時に発する様々な散乱光を調べ、分子の種類と量を計測する技術です。この方法では分子を標識する必要がないため、生きた細胞の中で起こっている代謝反応をそのまま調べることができます。私達はこのようにして得た細胞内の分子情報と遺伝子発現の情報を、機械学習と統計処理により結び付け、細胞の分子情報から遺伝子発現情報を予測する数理モデルを構築しています。そして、このモデルを用いてiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)の状態遷移を調べています。

ラマン顕微鏡、スペクトル、細胞画像 

技術

  • ラマン分光
  • 1細胞遺伝子解析

参考論文

  • "Visualizing the appearance and disappearance of the attractor of differentiation using Raman spectral imaging."
    Ichimura, T., Chiu, L., Fujita, K., Machiyama, H., Kawata, S., Watanabe, T. M., et al.
    Scientific Reports 5, 11358 (2015) doi:10.1038/srep11358

  • "Raman spectral signature reflects transcriptomic features of antibiotic resistance"
    Germond A., Ichimura T., Horinouchi T., Fujita H., Furusawa C., Watanabe T.M.
    Communications Biology 1:85 (2018) doi: 10.1038/s42003-018-0093-8

高輝度多色自発光タンパク質による遺伝子発現動態解析

概要

細胞には様々な「状態」が存在し、その結果として細胞は様々な「表情」を示します。本研究テーマでは、細胞内の遺伝子発現や生理活性物質の変化を生きたまま「検査」するツールとして、高輝度な3色の自発光タンパク質を開発しました。実際にこれを応用することで、ES細胞やiPS細胞などの万能性維持に関わる3種類の遺伝子発現の「状態」を、生きたままで高感度に解析することに成功しました。このように本研究で開発した高輝度多色自発光タンパク質を用いることで、ある「表情」を示す細胞の遺伝子発現・生理活性物質などの「状態」をより正確に「検査」することが可能となり、「表情」から細胞の「状態」を推測する方法の開発につながると期待されます。

多色自発光タンパク質

高輝度多色自発光タンパク質
 Nano-lantern

多能性関連遺伝子の発現状態

ES細胞コロニー
多能性関連遺伝子(nanog, oct, sox)の発現状態はばらついている。

技術

  • 高輝度多色自発光タンパク質 Nano-lantern

参考論文

  • "Expanded palette of Nano-lanterns for real-time multicolor luminescence imaging."
    Takai A, Nakano M, Saito K, Haruno R, Watanabe TM, Ohyanagi T, Jin T, *Okada Y, *Nagai T.
    Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 112:4352-6. (2015) doi:10.1073/pnas.1418468112

定量的一細胞代謝解析

概要

生物のからだを構成する細胞は外界から栄養を取り込んでいます。取り込まれた栄養は、新しい細胞をつくる材料として使用されるのに加え、細胞内のエネルギーを合成するのにも使われています。近年、どのような代謝反応で細胞が材料やエネルギーを作っているのか(代謝状態)は、細胞の役割(分化状態)と密接に関わっていることがわかってきました。つまり、単純に役割に必要な物質を代謝反応で供給するだけではなく、逆にどのような反応で材料やエネルギーを作っているのかで細胞の役割が変わるらしいのです。我々は、近年開発した細胞内の主なエネルギー通貨であるATP(アデノシン三リン酸)の量を計測する蛍光タンパク質「QUEEN」や、一つの細胞の内容物を取り出して分析するキャピラリー電気泳動質量分析技術を駆使して、代謝状態が細胞というシステムの中でどのような役割を担っているのかを解明しています。

 

分化状態と代謝変化は相互に影響
ATPセンサー
質量分析技術

QUEENを発現している細胞

大腸菌のATP濃度

大腸菌の細胞内ATP濃度は細胞ごとに大きく異なっていることが分かる


技術

  • 定量的蛍光ATPセンサー蛋白質 QUEEN
  • 1細胞質量分析

参考論文

  • "Diversity in ATP concentrations in a single bacterial cell population revealed by quantitative single-cell imaging."
    Hideyuki Yaginuma, Shinnosuke Kawai, Kazuhito V. Tabata, Keisuke,  Tomiyama, Akira Kakizuka, Tamiki Komatsuzaki, Hiroyuki Noji, Hiromi Imamura.
    Scientific Reports 4, 6522 (2014) doi:10.1038/srep06522

細胞内微細構造の3次元超解像ライブイメージング

概要

独自に開発した「高速超解像顕微鏡」を用いて、世界最高のシャッター速度で、生きた細胞内の微細構造を観察します。ミトコンドリアなど細胞内小器官の形態と動態、核内微細構造の詳細な観察により、細胞の状態を活きたまま非侵襲で DECODEします。

超解像顕微鏡で撮影したミトコンドリア外膜

ミトコンドリア外膜

小胞体の3次元超解像ライブイメージング画像

小胞体の3次元超解像ライブイメージング画像

技術

  • 共焦点顕微鏡光学系を利用した高速超解像顕微鏡

参考論文・文献

  • " A spontaneously blinking fluorophore based on intramolecular spirocyclization for live-cell super-resolution imaging."
    Uno S, Kamiya M, Yoshihara T, Sugawara K, Okabe K, Tarhan MC, Fujita H, Funatsu T, Okada Y, Tobita S and Urano Y.
    Nature Chemistry 6: 681-689 (2014) doi:10.1038/nchem.2002

  • "Ultrafast superresolution fluorescence imaging with spinning disk confocal microscope optics "
    Hayashi, S., Okada, Y.
    Molecular Biology of the Cell 26, 1743-1751 (2015) doi:10.1091/mbc.E14-08-1287

  • "Super-Resolution Imaging of Nuclear Bodies by STED Microscopy in Nuclear Bodies and Noncoding RNAs (Nakagawa S, Hirose T ed)"
    Okada Y, Nakagawa S.
    Methods in Molecular Biology 1262: 21-35, 2015

  • 「初めてでもできる! 超解像イメージング」 岡田康志編・著 羊土社、2016